2026.02.19

    2025年10月31日 トークイベントレポート

    2025年10月31日トークイベント

    TEA+プログラムの交換アーティストとして「モモコ」ことイェ・シンジュウがGAに訪れている。10月31日には国際交流棟4階講義室にて、シンジュウによるトークイベント「Composing Art History with “Video Documentation”: Case Studies from Taiwan」が開かれた。


    シンジュウは現在、国立台北芸術大学大学院美術専攻博士課程に在籍している。DIY的な手法とインディペンデントアート実践の方法論に焦点を当て、アートの「ビデオドキュメンテーション」が芸術史の編集に与える影響に興味を持つ。聞き馴染みのない言葉だが、彼女は現代アート変容の歴史を映像によって記録する「ビデオドキュメンテーション」について考え、実践を重ねているという。


    トークでは、台湾における「ビデオドキュメンテーション」の実践例を中心に、多岐にわたる内容が紹介された。


    アートにおける「ビデオドキュメンテーション」とは、アートに関わる行為全般を記録した映像資料を指す。「ドキュメンテーション」という表現が示すように、情報を保持し、作品の評価を確立させる「資料」として活用される。

    2017年、2018年ごろから台湾は政策の一環として文化アーカイブ事業や、台湾におけるアートの歴史の再構築に力を入れている。しかし、ビデオドキュメンテーションが残す情報は思うように還元されていない。


    シンジュウは「ビデオドキュメンテーション」の実践例として、1990年代の事例であるET@Tと黄明川を紹介した。ET@Tは1995年以降に開始されたオンラインアーカイブサイトで、公開されている映像は劇場で撮られたパフォーマンス、舞台裏に関わった人へのインタビュー、文化運動の断片など多様である。1998年から5年間は彼ら独自のネット網を通じて配信もされていた。一方、黄明川は映画監督かつドキュメンタリー監督で、1989年にインディペンデントに転身し、1990年代以降はドキュメンタリー作品を主軸に活動してきた。また、シンジュウは政治的な抵抗運動を記録した緑色小組(グリーンチーム)にも言及した。彼らの記録は、あくまでも結果的に、目撃者のような形でアートにおけるアクティビズムの映像を含むことになったそうだ。


    1990年代以降にこれらのさまざまな活動が起こった背景には、ビデオや映像媒体の変容がある。具体的には、

    ・1980年代には映像会社や一部の人しか使用できなかった映像撮影機材が商品化されたこと

    ・複数の政党が活動し始め、メディアが一般にも開かれたこと

    ・パソコンなどの技術が民主化されたこと

    が挙げられた。これらの要因はビデオと現代アートの結びつきも強めることになり、自主的に美術やパフォーマンスを記録するアーティストが観測されることとなった。


    シンジュウは、日本に滞在する期間のうちに、日本にもアートのビデオドキュメンテーションが存在するか、映像と日本の現代アート史はどのようにリンクしているか、台湾との違いはあるのか、といった問いを中心にリサーチする予定だ。19日には、黄明川の映像作品上映イベントが行われる。


    Profile

    イェ・シンジョウ

    イェ・シンジュウ(モモコ)

    Hsing-Jou Yeh(Momoko)

    アート研究者、プロデューサー、キュレーター。台北芸術大学大学院美術専攻博士課程在籍。研究テーマは1990年代台湾のアート史、特にDIY手法とインディペンデントアート実践のメソドロジーに焦点を当て、アートドキュメンタリー映画が芸術史の編集に与える影響に特に興味を持っている。

    Participants
    Hsing-Jou Yeh(Momoko)
    Date
    2026.02.19

    Other Report